1.不動産登記変更の必要性
不動産を売却した際、必要となるのが「不動産登記変更」です。ただし、「何をしたら良いの?」「本当にやる必要はあるの?」と思う方もいるでしょう。
ここでは、登記変更の必要性についてわかりやすく紹介します。「不動産売却ははじめて」という方は、今後の流れをイメージするためにもぜひご一読ください。
1-1.不動産登記変更が
必要なわけ
「不動産登記が必要な理由」を知るためには、まず不動産登記の内容を詳しく確認することから始めましょう。不動産登記の内容は、不動産の物理的・外形的な状況を記録した「表題部」と、不動産の権利に関する状況を記録した「権利部」に分割されています。
その中で法律上の義務として登記が要求されているのは表題部のみです。表題部に関する登記は、建物を取得してから1ヶ月以内に登記申請を行う必要があります。
もし、1ヶ月以内の登記申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科されるリスクがあります(不動産登記法第164条)。
一方、所有権や抵当権が記録されている権利部に関しては、法律上登記を行う義務は課せられていません。ただし、後々のトラブルを防止するためにも、権利が変動した際には速やかに登記を行うことが重要です。
1-2.不動産登記簿の確認方法はネットで可能
不動産登記簿を確認したい場合、以前は法務局に行くか、郵送で交付請求して閲覧する方法が一般的でした。
しかし近年では、「登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム)」を利用することができます。これにより、インターネット経由で必要書類を請求し郵送で受け取れるようになりました。
また、「とにかく早く登記内容をチェックしたい」というニーズに応えるため、「登記情報提供サービス」というサービスも提供されています。
PDF形式で提供されているため、対応時間内であればすぐに登記情報をインターネットで閲覧できます。
1-3.登記変更申請に必要な書類と手続き
1-3-1.自分で申請する場合
所有者自身が申請する場合、「自分で法務局に足を運んで申請する」方法と「オンラインで申請する方法」があります。
法務局で申請する方法
法務局での申請は以下の手順で行います。
1.新しい居住地の役所で転入手続きを行う
2.新しい居住地の役所で印鑑登録を行う
3.新しい居住地の役所で住民票を取得する
4.法務局で登記申請書と必要書類を提出し、申請する
オンラインで申請する方法
オンラインの場合、以下の手順で申請します。オンライン申請はマイナンバーカードが必要です。なお、不動産登記の申請書の様式、見本は法務局のページからダウンロードできます。
1.新しい居住地の役場で転入手続きを行う
2.新しい居住地の役場で印鑑登録を行う
3.金融機関のインターネットバンキングの口座を作る
4.マイナンバーカードに電子署名を登録。次にICカードリーダーを購入する
5.公的個人認証用の「利用者クライアントソフト」をパソコンにインストールする
5.公的個人認証用の「利用者クライアントソフト」をパソコンにインストールする
6.役所で「住民票コード通知票」を発行する
7.「申請用総合ソフト」を使用して申請する
オンライン申請には注意点があります。それは、事前の準備や登録が複雑であるため、繰り返し何度も登記申請するような専門家でない限りは、利用するメリットはないという点です。
住所変更登記は郵送で法務局申請してもデメリットはありません。遠方に住んでいる場合には直接法務局に行く代わりに、郵送を利用することも検討しましょう。
1-3-2.専門家に依頼する場合
「自分で申請する時間がない」「申請が難しそうで不安……」という場合は、司法書士に依頼すれば、書類を作成し代理申請してもらうことが可能です。
不動産登記の申請書は、不慣れな人には書き方がわかりづらい部分もあるので、プロである司法書士のチェックを通して申請することで、登記内容のミスなども防げるでしょう。
なお、登記名義人の住所変更登記などの所有者の情報を変更する登記申請を業務として代理できるのは司法書士です。弁護士も法律上はできますが、ほとんどの場合司法書士にお願いすることになるはずです。
お住まいの地域の司法書士をインターネットで調べるなどして依頼してみましょう。
2.不動産登記変更に
伴う課税制度
不動産の登記変更を行うと、譲渡所得税や相続税などさまざまな税金の支払い義務が発生するケースがあります。「いくら支払う義務があるのか」「逆に、支払わなくてよいパターンもあるのか」とお悩みの方もいるでしょう。
ここでは、不動産登記変更に伴う課税制度について、詳しく紹介します。
2-1.譲渡所得税について
不動産を売却した際、利益が生じると「譲渡所得税」が発生します。いくら税金がかかるのか、まずは以下の計算式で譲渡所得を計算しましょう。
譲渡所得=不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用) |
取得費は「不動産を取得した際にかかった費用(購入代金など)」を指し、譲渡費は「不動産売却時に支払った費用」を指します。
譲渡所得にかかる税率は、不動産の所有期間が5年を超えているかどうかで異なります。売却した不動産の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%となります。
一方、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%です。
短期譲渡所得の税率 | 所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63% |
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長期譲渡所得の税率 | 所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315% |
いずれの場合も、2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税が加わる点も把握しておきましょう。なお、所有期間は「不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているか」で判断します。
2-2.登記免許税について
「登録免許税」とは、不動産売却で所有者が変わり、不動産登記上の所有者の名義が変わる際に発生する税金です。
登記に関わる費用は大きく分けて2種類あります。ひとつは、売却時まで住宅ローンが残っていた場合に抵当権を抹消するための登記費用で、一般的には売主負担となります。
もうひとつは不動産の所有権の移転や抵当権を設定するための登記費用です。これは買主負担になるのが一般的です。
抵当権抹消の登記は、不動産1件につき登録免許税が1,000円発生します。土地と建物は別々の不動産として数えるため、土地と建物を売却する場合は2件となり2,000円となります。
この手続きは複雑かつ重要であるため、司法書士に依頼したほうが良いでしょう。手続き費用は手数料を含めて5,000円~2万円が目安です。
土地の場合、所有権移転登記に固定資産税評価額×2.0%の税率で登録免許税が発生します。一方住宅では、所有権移転登記は2.0%の税率です。
2-3.相続税について
「相続税」は、遺産を引き継ぐ際に生じる税金です。財産の相続税評価額の合計から基礎控除額を差し引いた額がプラスになった人に申告・納付の義務が生じます。 基礎控除額の計算式は以下の通りです。
3,000万円+600万円×法定相続人の数=基礎控除額 |
法定相続人とは民法で定められた相続人を意味します。被相続人の配偶者や子どもなどが該当するでしょう。たとえば、相続をする人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除額は以下のようになります。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円 |
この場合、遺された財産の評価額合計が4,800万円よりも多ければ相続税の申告・納付義務が生じます。
2-3-1.相続税の申告・納付期限
相続税の申告・納付期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。たとえば1月5日に亡くなった場合は、その年の11月5日が期限となります。
この期限は「厳守すべきもの」と考えましょう。期限を守らないと「無申告加算税」をはじめさまざまなペナルティーが課せられます。
なお、不動産の相続は節税対策としての役割も持ちます。現金などに比べて相続税の負担軽減につながる特例や評価のルールがあるため、有利になることが多いからです。